医療系

病気について薬以外に大事なこと

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こんにちは。ぽん太先生です。

病院にかかる患者さんの中にたまに「取り敢えず何か薬をください。」と言う人がいて対応に困ることがあります。

病気・症状の原因が何かによって処方する薬も違えば、薬よりも別の事の方が大事かもしれません。

「病院に行って薬をもらったら全部解決する」と期待して病院にかかるのかもしれませんが、これは間違いです。

たしかに薬を使えば治る・症状が治まる病気はたくさんありますが、そうじゃない病気もたくさんあります。

今回は「病気に対する考え方」について自分なりの考えを伝えていこうと思います。

目次

そもそも病気とは

まず初めに、「病気」の意味を辞書で調べてみると

 生体がその形態や生理・精神機能に障害を起こし、苦痛や不快感を伴い、健康な日常生活を営めない状態。医療の対象。疾病(しっぺい)。やまい。

 悪い癖や行状。「いつもの病気が出る」

」   (デジタル大辞泉より引用)

とのことです。

医学部の頃にはWHO(世界保健機関)の定義する「健康」について教わりました。

健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態のことである。単に病気や虚弱さがないというだけではない。

(ぽん太訳。原文:『Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.』)

」     (World Health Organizationより引用)

「健康」の定義に『社会的に(social)』が入っているのは非常に興味深かった覚えがあります。

たとえ健全な肉体と精神を持っていたとしても、偏見を受けたり貧困のために社会的に良好じゃない場合には健康とは必ずしも言えないということです。

学生時代にはあまり意識しませんでしたが、実際医者として仕事をしていると「『社会的な』サポートのおかげで患者さんが元気になった。」と思う場面は多いです。ケアマネージャーさんやMSW(医療ソーシャルワーカー)の方とはほぼ毎日何らかの相談をしますし、医療や介護だけで困難な場合には役所や保健所や警察などと連携することもあります。

このように「健康じゃない状態」を改善するには病気の治療だけでなく、社会的なサポートが必要な場合があるのです。

病気に対する捉え方

さて、多くの人にとって病気は病院に行って薬を貰いさえすれば治ると思っています。風邪とか胃腸炎とかは確かに一過性の病気なので、解熱薬とか整腸剤を暫く飲んでいれば直に自然と治ります。しかしながら、今世界を騒がしている新型コロナウィルスは風邪同様にウィルス感染症ですが、一旦治っても後遺症が出てしまう場合もあります。

あるいは、高血圧・糖尿病・高コレステロール血症などのいわゆる生活習慣病は自覚的には何も困らないので放置している人も多い病気です。数十年後に脳梗塞や心筋梗塞などを起こした時に、取り返しのつかない状態になってから初めて後悔する病気でもあります。

あるいは、ALSやパーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患のように特に原因がない中で病気になって、通院して薬を飲んでいても徐々に進行していく病気もあります。

いろんな病気がある中で病気の時期の考え方として、急性期、回復期、慢性期/安定期という捉え方があります。

風邪で言えば、急性期は熱が出てしんどい時期、回復期は熱は収まったけど本調子じゃなくてしばらく休んでいる時期、慢性期/安定期は会社や学校に行くなど日常生活へ戻る時期です

急性期は薬などを使った治療が大事な時期で、回復期はリハビリとか体力を戻すのが大事な時期で、慢性期/安定期は介護とか受け入れ体制を整えるのが大事な時期です。

どの時期においても、治療・リハビリ・介護・社会的サポートの全てが関係しますが、時期によってそれぞれの大事さのバランスが変わってきます。

健康な時にはイメージが湧きにくいと思います。もしも重たい病気になっても、高額療養費制度、傷病手当金、介護保険、指定難病、自立支援医療、身体障害者手帳など様々な社会福祉制度を利用することで、特に慢性期/安定期における「社会的な不健全さ」を「治療」することができます。

ただ、こう言った社会福祉制度について医者はあまり詳しく無いことが多いです。医学としては勉強していないからです。

「何か利用できる社会福祉サービスはないか?」と思ったら、病院ならそういった事に相談に乗ってくれる部署(社会福祉事業部など)があることも多いので、紹介してくれるように相談してみましょう。病院に行ってないならネットで調べたり役所で相談してみてもいいかもしれません。

まとめ

「病院に行って薬をもらいさえすれば全部解決する」という考えは間違っています。薬よりも体力づくりが大事かもしれないし、生活リズム・習慣を変えることが大事かもしれないし、環境を変えることが大事かもしれないし、何らかの制度の利用が大事かもしれません。

自分で行動することが難しければ家族に相談したり、公共の相談窓口に相談したりもできます。

体調不良を感じて病院で検査を受けても何も異常が無いと言われた場合に、意外とちゃんと良く寝ることが一番大事だったということもあります。

寝れば全部治るなんて大雑把な事は言いませんが、良い睡眠は健康の基礎です。良い睡眠を取らないと健康を崩しやすくなるのは確かです。

そして健康は幸福の基礎です。健康を損うと幸福を感じにくくなります。

それぞれの状況・病状・事情によって適切な対応は全く違うでしょう。『健康』の維持には病院以外にも色んな手段があることを知っておいてください。

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