「医者ってどんな生活してるんだろう?」
「高給取りって聞くけど実際どうなんだろう?」
医者ってドラマとか漫画とかでよく取り上げられるので「かっこいいなぁ」「子供が勉強できるなら医者になれば安心だ」といったプラスのイメージがあります。
受験業界でも「勉強ができるならとりあえず医学部に行け!」という風潮です。
しかしながら親が医者でもない限り実際どんな生活をしているのかイメージ湧かないですよね。
実際僕も医者の生活を全くわからないまま医学部へ進みそのまま医者になりました。
そして働く中で嬉しいこと・楽しいこと・悲しいこと・辛いことなど様々経験してきました。
「医者を辞めたい」と思うことも何度もありました。
今回は現役内科医として働く中で感じた医者になることのメリット4つ・デメリット3つを紹介していきます。
急性期の総合病院での勤務医経験が最も長いのでその視点からの話になります。
ドラマや漫画は外科系が多いですが、今回の話では一般的にイメージされる医者の姿に近いと思います。
目次
メリット
給料が良い
国税庁の調査によると一般的な給与所得において20代後半での平均年収が362万円(男性393万円、女性319万円)、全世代での平均年収が433万円(男性532万円、女性293万円)のようです (参照:令和2年度民間給与実態統計調査結果)。
そんな中で、医者の場合は医学部を卒業してすぐの20代後半でも平均年収が男性752万円、女性639万円というデータもあります。
実際僕も当時で年収800万~1000万円くらいは貰っていました。
都会の病院は給料が安く、田舎に行くと給料が高くなる、という傾向があるので病院を選べば20代後半でも年収2000万円を十分狙えます。
逆に、そこから年収を上げることは難しく、ベテランになっても勤務医では2000万円を超えることは厳しいです。
一方で開業医になれば青天井なのでさらに上も狙えます。
社会的にも病院内でも地位が高い
一昔前は『お医者様が言うことは絶対』という傾向が強く、病院内では絶対的な権力者でした。
いわゆる『白い巨塔(山崎 豊子 著)』のイメージです。
しかし最近はそういった権力主義はほとんどありません。
患者・患者家族・医師・看護師・リハビリ・検査技師・医療事務・MSWなどみんなで協力して治療に当たるチーム医療という考え方が一般的です。
無駄に偉そうにしている医者は滅多に見かけません。
それでも、医者の権限は大いに残っています。
治療方針は患者さんと相談して決めるとはいえ結局は医者の説明の仕方に影響されますし、看護師さんやリハビリのセラピストさんなども法律的には医者の指示に則って医行為を提供しています。
日常業務の中で法律を意識することはほとんどありませんが、制度的にも医者は必要とされています。
患者さんや家族から感謝される
医者の仕事をしていると感謝されることはたくさんあります。
医者として当然のことをしているだけですが、感謝されるとやはり嬉しいものです。
また、入院時は危なく死にかけている人を何とか治療して最終的に自宅に帰してあげられた時は達成感と共にとても嬉しくなります。
「医者をやってて良かった」と思う場面です。
医者になってからも選択肢が多い
何科に進むか、どの病院で働くか、医局に入るか、研究に進むか、開業するか、バイトをするか、など医者になった後でも働き方はいくらでも選べます。
医師免許さえあれば日本国内どこででも職が見つかります。
選ぼうと思えば自分にあった働き方を途中で選び直すことも可能です。
デメリット
当直という働き方
総合病院などで勤務医をすると「当直」という業務が雇用契約書に大体セットで入っています。
一般的な業態での「当直」というのは労働基準法によると「定時巡視や緊急の電話応対など軽微な業務を行う」ためのものであり、その時間中はほとんど労働をする必要のない勤務のみ行うものと定められています。
しかし急性期病院における当直勤務では救急搬送が入ることが多々あります。
「軽微な業務」とは到底言えないような労働をしなければならないのが実態です。
「日中普通に働いて、夕方になったらそのまま当直。当直中は緊急対応続きで全く眠れず、運が良い日は3時間眠れる。当直明けも夕方まで通常通り勤務して運が悪いと残業で夜まで働く。そんな当直を月8~10回する」という病院もありました。
一方で病院によっては「寝当直」と呼ばれる本来の意味での「当直」ができるところもあります。
当直明けの勤務に関しては「昼12時には帰れるようにしよう」という風潮が広まってきています。労働環境は徐々に改善しています。
しかしながら、夜間・休日の緊急患者さんを受け入れる急性期病院の多くは未だに医者の努力・根性で支えられています。
特に医者・病院の少ない地方だとその傾向は強くなります。
そして医者が離れていき、病院もさらに減っていき、残された医者はより激務になっていく負のループが生まれてしまいます。
休日も休日とは言えない
以前に50代くらいの部長(ある科のトップの先生)が「今までに病院に来ない日は1日も無かった」ということを自慢していました。
平日は当然のことながら、週末・祝日・年末年始・ゴールデンウィークなどの休日でも午前中に1時間くらい病院に来て入院患者さんを回診していました。
「プロフェッショナリズムとして素晴らしい先生だな」と思いましたが、一方で医者も人間であり、当然自分の生活があります。
「それを真似して一生続けることはできないな」とも思いました。
自分の担当の入院患者さんは休日だろうと夜中だろうと当然病院に居ます。
入院治療していても病状が悪化することは当然ありますし、平日昼間にだけ体調が悪くなるわけではありません。
夜間・休日などは当直医が交代で勤務しているので簡単な要件であれば当直医が対応してくれます。
しかし基本は主治医制であることがほとんどなので担当の入院患者さんに何かあると結局病院から電話がかかってきます。
患者さんが全員安定している時期であれば家でもある程度安心して過ごせますが、それでも心のどこかで「病院から電話が来るかもしれないな」という考えは常に残っています。
最近一般企業などでは「つながらない権利」が議論されるようになりました。
働き方改革によって医療業界でも少しずつ改善してきてはいますが、「プロフェッショナリズム」という言葉を使った「やりがい搾取」の場面は未だに残っています。
寿命が縮む
昔から医者の不養生とはよく言います。
医者の寿命は平均寿命より10年短いというデータもあるようです(2008年~2017年の岐阜県保険医協会調査)。
このデータの解釈には異論もあるようですが、上記で説明したように健康的な生活を送れない医者が多いことは確かです。
病院の職場健康診断を当直明けに受けて何らかの項目にひっかかっていた50代の医者もいました。そりゃそうだろうと(笑)
まとめ
どうだったでしょうか。医者の生活がなんとなくイメージできたでしょうか。
今回紹介したのは主に急性期の総合病院での生活です。
その生活が自分に合わないなと思ったら療養型病院・開業医・産業医・研究者・バイト生活など医者には選択肢が他にもたくさんあるのでご安心ください。
ただ、「急性期の総合病院の医者」という存在は地域に住む人の命を支えるのに絶対に必要な存在であり、誰かがそれを担っています。
人の健康・命を預かる仕事なので責任は重く、ちょっとしたミスが重大な事故につながりうる業種です。
責任を抱え込みすぎたり、睡眠時間を削られたり、患者・患者家族や上司の医者から無理な要求をされたりして体調を崩して辞めていった同僚の医者も見てきました。
少なくとも、勉強ができるだけで万人が一生続けられる仕事ではありません。
この記事が将来の選択肢を考える一助になれば幸いです。